内視鏡で見る食道の病気
以下に症例を提示し解説します。(内視鏡写真の右下に名前が入っているため写真の一部を加工して名前を消していますが、それ以外は一切修正しておりません。)
食道と胃の接合部分の食道側(すなわち食道の一番下)に病変が現れることが多いため主にその部分の写真を提示しています。
逆流性食道炎
ほぼ正常の食道下部の内視鏡画像です。粘膜表面近くに、たてに走る細かい血管が透見されます。
比較的軽度の逆流性食道炎の内視鏡画像です。食道の粘膜が炎症により肥厚し白っぽくなっています。先ほど提示した正常像にみられたような血管は全く確認できません。
この症例も逆流性食道炎の方の下部食道の内視鏡画像です。先ほどのように食道下部の食道粘膜が白色調肥厚を呈している他に。粘膜の一部にビランが認められます。ビランとは粘膜が損傷を受け脱落している状態=傷がついている状態のことです。
この画像は胃の中から胃・食道接合部を見上げたもので、高度の食道裂孔ヘルニアの症例です。黒く写っているのは内視鏡スコープの一部です。本来この部分には隙間がないのですが、この症例ではかなり広くこの隙間が広がっており、この隙間から食道へと胃液の逆流が起こりるため、次の写真のように高度の逆流性食道炎を起こしていました。
数条の縦に伸びるビランが食道のかなり上の方まで認められました。この症例の方は強い胸焼けで苦しんでおられましたが、薬を服用するだけで症状がよくなり内視鏡の所見もおおいに改善しました。
食道癌
症例1
比較的早期に発見した食道癌の症例です。進行するに従って癌は深く浸潤していきますが、この症例では比較的表面に近い部分にのみ存在しています。写真の上半分にわずかな粘膜の不整があるのですが、見る人がみないとわからないと思います。(見る人がみればわかります。)
症例1
上の写真と同一の症例です。この内視鏡画像は上記の病変部分に色素をかけて病変を浮かびあがらせたものです。正常の食道は茶色に染まりますが癌の部分はこの色素に染まりません。(空気量の違いで少し膨らみ方は違いますが、上の写真とほぼ同じ部位を同じアングルで撮影しています。)
症例2
進行食道癌の症例です。食道の下の方にできた病変で、表面の変化は比較的おとなしいですが、胃へと直接浸潤していました。
症例2
上の写真と同一の症例で、色素を散布した内視鏡画像です。症例1の写真のところでも説明しましたが、色素を散布することでこのように病変の範囲がより明瞭になります。この症例は他施設にて手術が行われました。
症例3
進行食道癌の症例です。この症例は他施設において放射線療法(放射線をあてて癌を縮小させる治療法)と化学療法(抗癌剤による治療)の併用療法が行われました。食道癌は放射線療法や抗癌剤による治療に反応することが多く、進行癌であっても治療の選択肢は増えています。