内視鏡で見る胃、十二指腸の病気
以下に症例を提示し解説します。(内視鏡写真の右下に名前が入っているため写真の一部を加工して名前を消していますが、それ以外は一切修正しておりません。青い色素を撒布してから撮影した写真は色素撒布像と表現しています。)
慢性胃炎
![慢性胃炎01](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p14-1.jpg)
正常の胃(体部という胃の真ん中あたりを撮影したものです。)
胃粘膜の萎縮のない健康な胃の内視鏡像です。粘膜に胃の襞(ヒダ)が発達しているのが観察されます。このような胃には胃底腺の過形成によるポリープが発生することがしばしばあります。(次の胃ポリープの項目で提示します。)
![慢性胃炎02](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p15-1.jpg)
慢性萎縮性胃炎(体部という胃の真ん中あたりを撮影したものです。)
慢性萎縮性胃炎の内視鏡像です。上の正常な胃との違いとして粘膜の襞がほとんどなく、表面がやや曇った感じになっているのがわかると思います。表面がデコボコしてくるのですが、この写真ではわかりにくいので次に色素を撒布した内視鏡像を提示します。
![慢性胃炎03](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p16-1.jpg)
慢性萎縮性胃炎(色素撒布像。前庭部という胃の十二指腸寄りの部分を撮影したものです。)
青い色素を撒布することで、粘膜の表面の凹凸が強調され、より詳しく病変を観察することができます。通常、慢性萎縮性胃炎では、表面がデコボコ、ザラザラしてきます。このように色素撒布像ではその様子がより明瞭に観察されます。
胃ポリープ
![胃ポリープ01](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p17-1.jpg)
胃底腺の過形成によるポリープ。
写真のポリープの大きさは3mm程です。周囲の粘膜表面とポリープの表面にあまり質感に違いがないのがわかるでしょうか。このポリープは胃底腺という正常組織が増殖して盛り上がっただけのポリープで、放置しても何ら問題ないものです。同時に何個もできている場合が少なくありませんが、数も問題にはなりません。通常それほど大きくなることは少ないポリープです。(大きさは最大でも10mmくらいまでです。)
![胃ポリープ02](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p18-1.jpg)
胃底腺の過形成によるポリープ(色素撒布像)
これも胃底腺の過形成によるポリープです。写真には2箇所ポリープが写っています。周囲の胃粘膜は襞によって多少デコボコしたように見えますが、胃炎による変化はほとんどありません。このように胃底腺の過形成によるポリープは萎縮性胃炎のない正常な胃粘膜から発生してくることが知られています。
![胃ポリープ03](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p19-1.jpg)
腺窩上皮の過形成によるポリープ(色素撒布像)
これは、幽門部(胃の出口の部分)のポリープで、青い色素を撒布して撮影した画像です。全体として赤みが強いポリープで、ポリープ表面の白い部分はビランです。これも組織学的には腺窩上皮の過形成によるポリープで、基本的に経過観察だけでよいことが多いですが、時間の経過と共に次第に大きくなることがあります。まれに出血を起こしたり、ポリープにより食べ物が通りにくくなる症状が出る場合があり、このような場合には内視鏡を使って切除することが可能です。胃炎の起こっている場所にできやすく、ピロリ菌との関連が指摘されています。
胃癌
早期胃癌の症例1
(左:通常の内視鏡画像 中:色素撒布像 右:治療後の内視鏡画像)
一見しただけではわかりにくいと思いますが、わずかに隆起した部分が病変です。正常な部分との境界がわかりにくい病変ですが、早期胃癌の症例です。
内視鏡によって切除を行い、完全な病変の切除が行えました。治療後の内視鏡画像のところで写っているのは金属でできた止血用の処置具です。内視鏡で切除した際に使用されそのまま残っていますが、残しておいても特に問題ないものです。(病気によっておこる消化管の出血でも使用されるものです。)この方はもう一箇所ほかの場所にも早期がんがありこの病変と同時に治療を行うことができました。
早期胃癌の症例
(左:色素撒布像遠景 右:色素撒布像近接)
背景の胃炎はつよく、一見どこに病変があるのかわかりにくいですが、不自然に出血しているところ付近の陥凹が病変です。この病変も内視鏡的切除によって完全な治療が行えました。
早期胃癌の症例3
(左:色素撒布像遠景 右:色素撒布像近接)
通常の内視鏡で、赤い部分が病変の範囲です。色素を撒布すると病変が周囲と比べ陥凹しているのがわかると思います。
![胃ガン04](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p23.jpg)
進行胃癌の症例
食欲不振を訴えて来院された方に発見された体部の進行胃癌です。比較的大きな病変ですが自覚症状としての痛みは殆どないものでした。
胃、十二指腸潰瘍
![胃、十二指腸潰瘍01](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p24.jpg)
胃潰瘍の症例1
胃角小弯という部位に繰り返して潰瘍を発症している症例です。ピロリ菌の存在を確認したため、除菌治療を行いました。
![胃、十二指腸潰瘍02](https://noguchi-hospital.jp/wp_noguchi_iin/wp-content/uploads/2018/02/p25.jpg)
胃潰瘍の症例2
急性胃潰瘍の症例。大きく深い胃潰瘍で、潰瘍の底の部分に胃の筋層がうっすら露出しています。部位は症例1と同じく胃角小弯という部位に発生しています。かなり大きな潰瘍で出血の痕跡も認めたため、他施設で入院していただき、その後外来で治療を行い最終的に治癒を確認しました。
胃潰瘍の症例3(色素撒布像)
左の写真中央にあるのが潰瘍です。既にこの部位に変形がみられ、過去にもこの部位に胃潰瘍があったことが伺えます。右の写真は内服によって治癒した後の内視鏡像です。潰瘍組織の病理検査でも悪性細胞はなく、再発性胃潰瘍と考えられました。
十二指腸潰瘍の症例1
(左:色素撒布像遠景 右:色素撒布像近接)
左の写真は十二指腸潰瘍の急性期の写真です。右の写真は内服によって治療後の内視鏡所見で、潰瘍は治癒しています。他の場所にも潰瘍瘢痕(治った跡形)がみられています。